「替え歌」と著作者人格権

2014年11月、1990年代のヒット曲の歌詞をめぐり、その作詞家A氏が、替え歌をテレビ番組で披露し、さらにその歌詞とタイトルを変えた楽曲を収録したアルバムを発売した歌手B氏を「著作者人格権侵害」を理由に提訴する(民事訴訟を提起する)という事件がありました。

本件に限らず、音楽業界では、「歌詞を無断で変えた」という理由でトラブルとなるケースがたびたび見受けられます。

 

替え歌を巡る事件で、まず問題となるのは、作詞家が、その作詞した歌詞に対して持っている「著作者人格権」であり、これは、財産権である「著作権」とは異なる権利です。

著作者人格権とは、著作者の「人格的・精神的利益が保護される」という権利であり、著作権法には、具体的に「公表権、氏名表示権、同一性保持権」という3つの著作者人格権が規定されています。

例えば、未公表の歌詞を、他人が勝手に公表し、又は勝手に公衆の面前で歌ってしまうと「公表権の侵害」となり、

作詞家の氏名を隠したり偽ったりした場合は「氏名表示権の侵害」となり得ます。

また、歌詞や題号(タイトル)を改変・削除した場合には、「同一性保持権」の侵害となり得ます。

「ヒット曲の歌詞」の場合、作詞家の公表権と氏名表示権が問題となることは希であり、今回のケースも、「同一性保持権」が一番の問題となるでしょう。

 

著作者人格権は、著作権法が規定する著作者の権利の中で「最も強い権利」であり、譲渡や相続の対象とならず(これを「著作者の一身専属権」といいます。)、また、利用者側から著作者に「放棄させること」もできません。

一方、同一性保持権の例外として、著作者から許可を受けた改変や、例えば、番組の放送時間の都合上、歌詞をカットするなど「やむを得ない改変」であれば許されます。

また、著作者と利用者間で「著作者は、著作者人格権を行使しない」という、いわゆる「不行使特約」が結ばれるケースもありますが、この特約をした場合でも、著作者人格権の性格上、「どのような改変でも許される」わけではなく、著作者の許容範囲を超えた改変を行えば、やはり「著作者人格権(同一性保持権)の侵害」となるおそれがあります。

なお、侵害者に金銭賠償を求める場合、著作権など「財産権」に対する侵害は、「損害賠償請求」の問題となりますが、著作者人格権など「人格権」に対する侵害は、精神的な被害を金銭価値に置き換えた「慰謝料」の問題となります。

今回のケースも、A氏がB氏に求めているのは、著作者人格権の侵害に対する「慰謝料」です。(塩島)