私的使用目的でも禁止される「違法ダウンロード」とは?

違法ダウンロード禁止法案は国会提出見送り!

2019年3月、「政府・自民党は、違法ダウンロードへの規制を強化する著作権法改正案の今国会への提出を見送ることにした」との新聞報道がありました。

「今年行われる参院選を控え、ネット世論に配慮した(選挙対策)」、「(他の著作物から影響を受ける)クリエーター団体など関係者の理解が十分に得られていない」、「著作物全般をダウンロード規制の対象とすることは、ネット利用を著しく萎縮させる」などの理由が挙げられていますが、本来、この法案(著作権法改正)は「漫画の海賊版」など、他人の(有料)コンテンツを違法に複製・配信している「海賊版サイト対策の強化」を目的としています。

この目的自体に異議を唱える人はいないと思われますが、日常的にインターネットコンテンツが作成・利用されている今日、この法案には「誰でも犯罪者になり得る(され得る)」という危険が含まれており、特に「著作物全般がダウンロード禁止対象」となり、「その違反者は刑罰対象となり得る」という点が問題視されています。

しかし、あまりニュースにはなっていませんが、この法案提出がなくとも、現行著作権法には、すでに「私的使用目的であってもダウンロード禁止」、「刑罰規定の適用もあり」とされる行為が規定されています。

自由にできる「私的使用のための複製」とは?

①著作権法は、特に「複製」に厳しい!

ひと言で「著作権」といっても、その内容(支分権)は様々です(複製権、演奏権、上映権、公衆送信権、貸与権など10種以上あります)。その中で、著作権法は著作物の「複製」に特に厳しく、「著作者(著作権者)が、その著作物を複製する権利を専有する」と規定しています(複製権。法21条)。つまり、数量・範囲・方法を問わず、「著作権者以外の者は、著作物を複製すること(コピー・撮影や録音・録画、インストールやダウロード等の再製行為)ができない」という意味であり、他の支分権の多くが「公(公衆)に直接見せ又は聞かせるための権利」である点と比較すると、たとえ「公に配布等する目的がなくとも、複製は禁止できる」という点で、非常に強い権利であるといえます。

②例外的に自由に複製できる「私的使用のための複製」

このように、著作権法は原則として「(他人の著作物は)複製禁止」としつつも、例外として「自由に複製できる場合」を規定しており、その中で私たちに最も馴染み深い有名な規定が「私的使用のための複製」です。

法30条1項柱書(私的使用のための複製)

著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる。

具体的に、趣味や受験勉強といった「自分自身のため」ほか、「家族のため」や、ごく少数の「友人同士」といった限られた範囲内であれば、他人の著作物であっても、その範囲を問わず(例:書籍の全ページやCDアルバム内の全曲であっても)複製することができるほか、自ら購入した著作物のみならず、図書館などで借りてきた著作物を複製することもできます。

一方、以下の複製は「私的使用のための複製」には該当しません(著作権者の許諾等が必要)。

「私的使用のための複製」に該当しないもの

1.個人が開設・運営するものでも「ホームページ」や「ブログ」、「その他SNS」への掲載(公衆送信)目的で行う複製

2.「職場内(仕事上)」や「学校(部活動など授業以外の活動)」での使用目的で行う複製

3.「他人の私的使用のため(代理)」として行う複製(いわゆる「自炊代行」)

「私的使用目的でも複製できない場合」がある!

このほか、以下の場合には、たとえ「私的使用目的」でも他人の著作物を複製することはできず、「刑事罰の適用対象となる行為」も規定されています(法30条1項1~3号、119条3項、映画盗撮防止法4条)

私的使用目的でも複製できない場合

1.公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(店舗設置CDダビング機等)を利用した複製。但し、店舗設置の「コピー機による(紙による)複製」は許される。

2.技術的保護手段(コピーガード・プロテクション、アクセスコントロール等)の回避等を自ら行った上での複製。

3.著作権を侵害する自動公衆送信(インターネット配信。国外で行われる自動公衆送信であっても、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行う「デジタル方式の録音又は録画」を、その事実を知りながら行う場合。→違反者には刑罰規定あり。

4.映画館等における有料公開開始から8ヶ月以内の映画の録画。→「盗撮」として刑罰規定あり。

特に上記「3」については、これもいわゆる「違法ダウンロード禁止」の規定であり、「違法配信されている音楽又は映像と知りながら行うダウンロードの禁止」は、すでに2009年著作権法改正により規定されているほか、その後の2012年改正により、特に本来は有償で(CD等や有料コンテンツとして)販売等されている音楽や映像の違法ダウンロードをした者に対する「刑事罰(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金。双方併科も可)」も規定されています(但し、被害者からの刑事告訴が必要=親告罪)。

本稿冒頭で述べたように、今回、「論文や漫画」をはじめとする文書、画像やプログラムなど「著作物全般を対象とする違法ダウンロード禁止法案」の国会提出(著作権法改正)は見送られましたが、すでに「音楽・映像のダウンロード」については、それらが違法配信されていると知って行うことは禁止されているとともに、刑事罰の対象ともなり得る点に注意が必要です。

 

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