権利制限(自由利用)規定を拡大!改正著作権法が成立

改正の趣旨

2018年5月18日(金)、第196回通常国会において改正著作権法(以下、「法」とします。)が参議院本会議で可決・成立しました。

今回の改正は、主に権利制限規定、つまり「著作物を自由に利用できる場合」に関するものです。改正の趣旨は、「デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々なニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者のための利用、及び美術館等におけるアーカイブ(保管記録)の利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにするため」とされており、大きく以下の4点が「今回改正の柱」となっています(文部科学省発「著作権法の一部を改正する法律案の概要」及び「概要説明資料」より転載)。

改正の概要(改正点)

1.デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(法30条の4、47条の4、47条の5)

① 著作物の市場に悪影響を及ぼさない(他人の著作物の表現自体は利用しない=著作権者の利益を不当に害さない)限り、インターネット上のビッグデータを活用した検索サービス等のための著作物の利用が、許諾なく行えるようになります。

② イノベーション(技術革新)の創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、利用方法をある程度抽象的に定めた規定が置かれます。

これにより・・・

→インターネット上の「所在検索サービス」がしやすくなります。例えば、検索サービス提供事業者が、「書籍情報の検索結果」として、書籍のタイトルと著作者名と共に本文(著作物)の一部を(無許諾で)表示できるようになります。

→例えば、企業や大学が、AI(人工知能)に大量の情報(著作物を含む)を入力(複製)して分析(深層学習=ディープラーニング)させることができるようになります。

→例えば、情報解析サービスの提供事業者が、大量の論文データ(著作物)を収集(複製)し、ある論文について盗用の有無を検証して検証結果として該当部分(著作物)を表示できるようになります。

2.教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(法35条)

ICT(情報通信技術)の活用により教育の質の向上等を図るため、学校等(営利目的のものを除きます。)の授業や予習・復習のため教師が他人の著作物を用いて作成した教材を、ネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為(公衆送信)等が、許諾なく行えるようになります。但し、対面(教室)授業及び当該対面授業の同時中継(同時遠隔授業)以外で利用する場合(注)には、個別の許諾は不要であるものの、文化庁長官が指定した団体に補償金を支払う必要があります。

これにより・・・ 

ワンストップの「補償金の支払のみ」で、学校の先生が他人の著作物を複製して作成した教材を、予習・復習のため、又はオンデマンド授業(Eラーニング)を受ける生徒のため公衆送信(メール送信や動画送信)できるようになります。

(注)対面(教室)授業及び当該対面授業の同時中継(同時遠隔授業)で利用する場合には、改正前(以下、「旧法」とします。)におけるのと同様に、先生は、無許諾・無償で他人の著作物を複製し、生徒に配布することができます。

3.障害者の情報アクセスの機会の充実に係る権利制限規定の整備(法37条)

旧法では視覚障害者など「視覚的」に著作物を認識できない方のみが対象となっていた書籍(著作物)の音訳等(音声による複製及び自動公衆送信)について、対象者の範囲を拡大し、「手」など肢体不自由のため書籍を保持したりページをめくれない人のためにも、障害者福祉事業者であって政令で定める者が、許諾なく行えるようになります。

4.アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(法31条、47条、67条)

① 旧法では、小冊子(紙媒体)への掲載に限定されていた美術館等の展示作品の解説・紹介用資料(展示作品等の写真掲載=複製)について、美術館等は、これをデジタル方式(サムネイル画像付)で作成してタブレット端末等に上映し、又は自動公衆送信することが、許諾なく行えるようになります。

② 旧法では、事前の補償金供託が必要とされた「著作権者が不明な場合」等における著作物の利用に関する(当該著作権者からの許諾に代わる)文化庁長官による裁定を受けた上での利用について、「国や地方公共団体」が利用する場合には、事前の補償金供託が不要となります。

③ 旧法では、日本国内の公共図書館等に限定されていた国立国会図書館による絶版等資料(書物その他の著作物の複製データ)の自動公衆送信が、外国図書館に対しても、許諾なく行えるようになります。

なお、以上の改正点のうち「1、3、4」は2019年1月1日から施行されますが、「2」の施行日は、「公布日(2018年5月25日)から3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

※改正条文「新旧対照表」はこちら→

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/02/23/1401718_004.pdf

特に改正点「1」については、規定そのものが抽象的であって法改正の影響も多岐にわたるため、文化庁において、具体的な運用に関する「ガイドライン」が作成されるようです。

ガイドラインが公表され次第、当サイトでもご紹介します(塩島)。


「権利制限(自由利用)規定」の意義や内容を理解するには、ビジネス著作権検定がお勧めです。

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