日EU経済連携協定(EPA)における知的財産ルールとは?

2017年12月、外務省経済局より「日本とEU(ヨーロッパ=欧州連合)における経済連携協定(EPA)に関するファクトシート(概要報告書)」が公開されました。

同年7月には、すでに当EPAの「柱」とも言える「工業製品関税」等についてEU側と大筋合意が成立しており、同省発表の「交渉の成果」を見ても、他のファクト(合意項目)についても同年12月までに「交渉妥結」とあり、「早期の署名・発効に向け、引き続き作業を継続する」と報告されています。

実は、このファクトシートには「知的財産」の項目があり、当EPAにより統一すべき知的財産ルールについて、以下のように記載されています。

(外務省経済局発「日EU経済連携協定(EPA)に関するファクトシート」より転載。下線部は著作権に関するもの)

(ルール分野の概要)14 知的財産

(1) 概要

 本章は、特許、商標、意匠、著作権及び関連する権利、地理的表示、植物の新品種、営業上の秘密及び医薬品等の開示されていない試験データその他のデータ等の知的財産を対象とする。

 日EU双方とも既に高いレベルの知的財産保護制度を有しているところ、これらの知的財産について、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)よりも高度又は詳細な規律を定める観点から、知的財産に関する制度の運用における透明化、十分かつ効果的な実体的権利保護を確保するとともに、知的財産の権利行使、協力及び協議メカニズム等について規定し、知的財産の保護と利用の推進を図る内容となっている。

地理的表示(GI)について、農産品及び酒類GIの保護のための双方の制度と対象を確認し、TRIPS協定第23条と概ね同等の高いレベルでの相互保護を規定する。

(2) 主な内容

ア 一般規定

国際協定、内国民待遇、最恵国待遇、手続事項及び透明性、知的財産の保護に関する啓発の促進等について規定する。

イ 知的財産に関する基準

著作権及び関連する権利著作者、実演家、レコード製作者及び放送機関の権利の保護、著作物等の保護期間の延長(著作者の死後70年等)、権利の制限と例外等について規定する。

商標商標権者の排他的権利及び例外、商標を表示するラベル・パッケージを商標権者の許諾を得ずに製造・輸入等する行為の禁止、周知商標の保護について規定する。

地理的表示(GI)

附属書に掲載される双方の農産品及び酒類のGIにTRIPS協定第23条と概ね同等の高いレベルの保護を与えること等を規定する。

権限のある当局に対し、自国・地域の法令に従い、職権で又は関係者の要請に応じて、附属書に掲載されるGIを保護するために必要な措置をとる権限を与えることを規定する。

知的財産に関する委員会において、附属書に掲載されるGIのリストを修正することができることを規定する。

附属書に掲載されるGIの保護の継続に影響を与える事由が生じた場合に、要請に応じて締約者間で協議を行うことを規定する。

意匠意匠権者の排他的権利及び例外、秘密意匠制度、意匠権の存続期間等について規定する。

未登録の商品形態商品の形態の模倣行為に対して法的救済手段を設けることを規定する。

特許特許権者の排他的権利及び例外,特許制度の国際調和に向けた協力、審査結果の相互利用促進に向けた協力等について規定する。また、医薬品及び農薬に係る特許の保護期間延長について規定する。

営業上の秘密及び開示されていない試験データその他のデータ営業上の秘密の不正取得・開示・使用に対する保護、医薬品及び農薬の販売承認手続における試験データの保護等について規定する。

植物の新品種

植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)の1991年改正条約上の権利・義務に従い、植物新品種の保護を与えることについて規定する。

不正競争不正競争行為に対する効果的な保護、ドメイン名(国別トップレベルドメイン)の不正登録行為に対する救済措置等について規定する。

ウ 知的財産の権利行使

民事上の救済に係る権利行使

知的財産侵害に対する民事上の救済手続に関し、証拠保全措置、暫定的・予防的措置、差止命令、損害賠償等について規定する。

営業上の秘密の不正使用に対する権利行使

営業上の秘密の不正使用に対する民事上の救済手続に関し、差止命令、損害賠償、秘密保持命令等について規定する。

国境措置に係る権利行使

税関における知的財産侵害物品の差止申立制度、職権による水際取締り、権利者への情報提供、税関当局間の協力等について規定する。

エ 協力及び協議メカニズム

協力

知的財産分野において、情報交換、経験及びスキルの共有その他の形態等による協力を行うことについて規定する。

知的財産に関する委員会

本章の規定の効果的な実施のために、知的財産に関する委員会を設立することについて規定する。

このように著作権については、「保護期間70年への延長」と「権利の制限(自由利用)と例外」等が盛り込まれており、アメリカの離脱により発効できていない(既に署名済の)TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に基づく改正著作権法(未施行=保留状態)より先に、このEPAに基づく保護期間の延長が実現される可能性が高まりました。

今年は、この「日EU・EPAに基づく著作権法改正」にも、注意する必要がありそうです。(塩島)

「著作権の保護期間」について、詳しくはこちらから→「著作権保護期間が70年に延びると損か得か?」 https://www.biz-shikaku.com/mincho/topic/40

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