「カラオケ歌ってみた動画」と著作隣接権

事件の概要

 2017年5月、カラオケ機器メーカー(A社)が、カラオケ店内で同社のカラオケ(音源)を利用して自ら歌っているシーンを動画撮影し、動画共有サイト(YouTube)上に公開した男性に対して当該動画の削除等を求めていた裁判において、東京地方裁判所が、A社の請求を認め「A社の著作隣接権を侵害している」として男性に公開禁止(動画削除)を命じる判決を下したとの新聞報道がありました。

カラオケ音源に生じる権利

 カラオケ音源には、著作権法上、下記のように音楽(楽曲・歌詞)の「著作者」に対する「著作権」に加え、音源を製作した「レコード製作者」等に対する「著作隣接権」が発生しています。

 「音楽の著作者」は、作曲家や作詞家であり、原則として「著作権者」という地位も兼ねています。但し、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)など「著作権等管理事業者」に著作権管理を委託(信託)しているケースも多く見られます。
 一方、「レコード製作者」とは、音楽など「音」の原盤(マスター)を製作した者(本件のA社)を指し、「著作隣接権」とは、著作者ではなくとも、著作物を社会に広める役割を果たす一定の者(実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者の4者=著作隣接権者)に認められる権利です。

「音楽」についての著作権

作曲家・作詞家の複製権、演奏権、公衆送信権など

「音源」についての著作隣接権

レコード製作者の複製権、送信可能化権(注1)など

 なお、いずれの権利も、個人や家庭内で利用する場合には「私的使用のための複製(録画等)」が自由に認められますが、「公衆送信(送信可能化)すること」までは認められません。
 今回の男性も、「(カラオケで歌っているシーンを)自己満足のために公開しただけ・・・」と弁明したようですが、インターネット上に公開すると、一気に「私的使用目的」ではなくなり、著作権と著作隣接権双方の問題となってしまいます。(注2)

「◯◯してみた動画」は、どこまで許されるか?

 例えば、市販の「料理レシピ」を利用して「料理を作ってみた」など、何かの「作り方」については、そのレシピ本など「他人の著作物」を直接撮影するなどしない限り、作っている過程や完成品を動画撮影して動画共有サイトに投稿しても(著作権法上は)問題となりません。
 しかし、「音楽」や「踊りの振り付け」については、いずれも著作物であるため著作権の問題となるほか、「カラオケや音楽CD」といった「音源」を利用する場合には、本件のように「著作隣接権」も問題となります。

 注意点は、「動画の中では、他人の著作物や他人が権利を有するであろうもの(音源に限らず、例えば顔写真など肖像権やプライバシーに関するもの)は利用しないこと」であり、また、個人的に撮影した動画であっても、他人の著作物や音源を「公衆送信(送信可能化)」すると、もはや私的使用の範囲を超えて様々な他人の権利がかかわってくる点に注意してください。

 

(注1)「送信可能化権」とは、インターネット配信の準備行為(アップロード等)をする権利であり、実質的には「インターネット配信をコントロールする権利」です。
(注2)「音楽の著作権」に関しては、YouTubeなど動画共有サイト側がJASRACなど著作権等管理事業者から包括的な利用許諾を受けている場合があります。
詳しくはこちらから→http://www.jasrac.or.jp/info/network/pickup/movie.html

 


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