キャラクターと著作権

事件の概要

 2017年2月、任天堂(株)が、同社の人気ゲームシリーズとして広く知られる「マリオカート」の略称である「マリカー」という標章(名称やマーク)を会社名として使い、同社の人気キャラクター「マリオ」等の著名なキャラクターのコスチューム(衣装)を貸与して公道カートのレンタルサービスを提供している㈱マリカー及びその代表取締役に対して、「マリオなどの衣装を客に貸して公道を走らせる画像や映像を無断で宣伝・営業に利用する行為は、不正競争行為及び著作権侵害行為に該当するため、侵害行為の差止め及び損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した」との新聞報道がありました。

キャラクターは著作物ではない!?

 皆さん、キャラクターと聞けば、「ミッキーマウス」や「キティちゃん」など、すぐにいくつもの人気キャラクターを思い浮かべることでしょう。
 しかし、そこで思い浮かぶのは、「映画のワンシーン」や「ぬいぐるみ」など、人それぞれ様々な場面で過去に経験した「キャラクター(イメージ)」ではないでしょうか?

 実はこの点が、キャラクターを著作権法で保護する上で難しい点であり、最高裁判決(判例)も、「具体的な表現を離れて、キャラクターを著作物とすること(著作権法で保護すること)はできない」としています。
 したがって、著作権法で保護を受けるには、単に「キャラクター(例:ミッキーマウス)」としてではなく、「特定のキャラクターの絵(例:カレンダー上に描かれたのミッキーマウスの絵=美術の著作物)」といった、具体的な表現物でなくてはなりません。

 これを本件に当てはめると、被告側の「マリオなどの衣装」や「これらを着てカートで公道を走る画像や映像」が著作権侵害と認められるには、これらが具体的に任天堂(正規)のゲーム(マリオカート)に登場する著作物(マリオの絵や走行シーンの動画等)に依拠した「複製物」と認められなければなりません。
 また、そもそも「マリオなどの衣装が、それのみで著作物(美術の著作物)と言えるのか?」も、判断が難しい点です。

キャラクターを守る法律はほかにもある

 このように、キャラクターや、そのコスチュームを著作権法で保護してもらうには、「具体的な表現物か?」、「著作物性があるのか?」という、著作権を語る前段階で大きな壁が立ちはだかります。
 一方、ミッキーマウスなど「キャラクターの名称」は「商標法」で、キャラクターを使用した商品(グッズ)など「工業製品」は「意匠法」で、それぞれ保護を受けることができるほか(注1)、商標登録を受けていなくとも、有名なキャラクターの名称などは「周知表示又は著名表示(注2)」として、不正競争防止法による保護を受けることができます。

 本件では、すでにマリカー社が「マリカー」という商標登録を受けているのに対し、任天堂が、「自社のゲームであるマリオカートとの誤認・混同を意図したものである」として、その登録の取消しを求め特許庁に「登録異議の申立て」をしましたが、こちらは「(任天堂が商標登録を受けている)マリオカートの略称として広く認識されていたとまでは認められない(=マリカーの商標登録取消要件を満たしていない)」として棄却されています。

 今後は、「著作権法」や「不正競争防止法」に基づく利用差止請求や損害賠償請求が認められるのか、特にキャラクタービジネスを展開する企業にとって、裁判の行方が注目されます。(塩島)

 

(注1)商標法や意匠法で保護を受けるには、特許庁への「登録」が必要です。
(注2)有名度は「周知<著名」です。「周知表示」とは、「ある程度有名な商品等表示(名称やマーク)」を意味し、これを使用して他人の営業と混同を生じさせる行為が「不正競争行為」とされます(周知表示混同惹起行為)。一方、「著名表示」とは、「全国的に有名な商品等表示」を意味し、これを使用する行為は、他人の営業と混同を生じさせなくとも「不正競争行為」とされます(著名表示冒用行為)。

 


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