「替え歌・パロディ」と著作権

事件の概要

 2017年1月、童謡「森のくまさん」をめぐり、その訳詞者であるA氏が、その訳詞にオリジナルのメロディーと歌詞を追加した楽曲をCDとして販売した芸人B氏、及びその販売元レコード会社C社に対し、「当該CDの販売差止めと、慰謝料300万円の支払を求める抗議文を送付した」との新聞報道がありました。

 この対応は、A氏の代理人弁護士によると「無断で歌詞を変えており、A氏の(訳詞に対する)著作者人格権を侵害している」点を主な理由としています。
 一方、同じく新聞報道によると、C社側は、「A氏の訳詞を管理しているJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)から許諾を受けた」旨の書面を当該CDと共にA氏に送付しているほか、「CD内には訳詞者としてA氏の氏名を記載している」との事でした。

 この事件、概要だけをみても「見解の相違」が見られます(A氏側は「著作者人格権」を問題としているのに、C者側は「著作権」の問題として捉えている)。

 本件につき、以下、著作権法の規定に照らし解説します。
※「替え歌と著作者人格権」については以前も取り上げています。

実は「替え歌」に関係する著作権は非常に多い

 幼少期をはじめ、誰でも一度は口ずさんだことのある身近な「替え歌」ですが、営利目的か否かにかかわらず、コンサートやインターネットを通じ「公衆(例:10人以上の多数)」に聴かせることを目的とする場合、替え歌には、著作者人格権のみならず、実は非常に多くの著作権(財産権)も関係してきます。そして、以下の改変の態様(パターン)により、関係する著作権も異なってきます(「法」とあるのは「著作権法」)。

※表中の「関係する著作権等」とは、「元の歌詞の著作者(著作権者)」が有する著作者人格権及び著作権を指します。 20170131

 なお、A又はBパターンについて、「替え歌」を公衆に向けて歌う(直接聴かせる)場合には別途「演奏権」が、録音してインターネット配信やCD販売をする場合には、別途「複製権、公衆送信権及び譲渡権」も問題となります(法21条、22条、23条、26条の2)。

 また、学校の文化祭など「営利を目的としない場合」には、他人の楽曲や歌詞であっても、自由に(許諾を得なくとも)演奏し、歌唱することができますが、著作者人格権に影響する「改変を加えた利用」までは認められません(法38条、50条)。

(注)元の歌詞の著作者が著名である場合には、著作者人格権の拡張である「名誉・声望保持権」も関係する場合があります(法113条6項)。

日本の著作権法は「替え歌・パロディ」には厳しい!

 このように、特に公衆に聴かせる場合、「替え歌」には著作者人格権のみならず様々な著作権(財産権)も関係してくるほか、歌詞など「音楽の著作物」に限らず、他人の文書(言語の著作物)、写真や映像を利用した、いわゆる「パロディ」についても、すでに存在する他人の著作物の「表現」を利用する限りは、原則として、「替え歌」のケースと同様に原著作物の著作者の著作者人格権と著作権に影響する(許諾等を要する)ことになります。

 なお、「替え歌・パロディ」について「(原作品の)引用であれば自由利用が可能なのでは?」との見方もありますが、引用の要件は法定されており、「引用は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とあるため、替え歌・パロディへの引用規定の適用は難しいと考えられます(法32条)。

JASRACからの許諾のみで大丈夫か?

 JASRACは、楽曲や歌詞といった「音楽の著作物の著作権者」から著作権の信託(移転)を受け、著作権者に代わりユーザーに楽曲や歌詞の利用許諾をし、その対価として使用料を徴収する団体(著作権等管理事業者)です。

 ただし、これはあくまで「信託を受けたオリジナルの楽曲・歌詞をそのまま利用すること」を前提とした許諾代行であり、「替え歌」の作成・公表については、「JASRACは(二次的著作物の創作のための)翻訳権・翻案権等の信託は受けておらず、また、著作者人格権(著作者の一身専属権)にも影響するため、直接、著作者の同意を得ていただくことになる」としています。

※JASRAC公式ホームページ内「よくあるご質問」参照
http://www.jasrac.or.jp/

結局、「替え歌」には著作者の許諾が必要

 以上、「替え歌」を巡っては、「著作者人格権と著作権」の双方が関係してくるほか、それぞれ複数の権利が同時に関わってきます。
 そして、安心して「替え歌」を公衆に聴かせるためには、結局のところ「著作者本人から許諾を得ること」が必要となります。

 みなさんも知っている(過去に歌われていた)「替え歌」の全てにつき、許諾があったとは思われませんが、多くの場合は、著作者に黙認されていた(又は著作者が知らなかった)だけであり、つまり「たまたま歌うことができた」にすぎません。
 したがって、特に営利目的で「替え歌」をインターネット配信し、又はCD販売する場合には、著作者から直接、上記の権利につき許諾を受ける必要があります。(塩島)

 


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