業務用のコンテンツデータ保存と「私的使用のための複製」

事件の概要

 2016年11月、受験生向けの参考書などを出版する大手出版社が、過去の大学・高校入試問題(約4000校分)をPDF化して同社管理のサーバに電子データとして保存していたところ、試験問題(素材)として使われた文章の著作権者側から「著作権(複製権)の侵害になるのではないか」との指摘を受け、すべて削除した旨の報道がありました。

情報源が著作物である場合に注意すること

 出版業界に限らず、このように「著作物を情報源としている業種」は数多く存在します。そして、企業側は、「本や原稿などは保管が大変だから、データ化してパソコンで管理しよう」と考えるケースもあるかもしれません。

 しかし、ここで注意すべきは、現行法下では、「企業は、正規に(著作権者から許諾を得たり、本や雑誌などを購入したりして)入手した著作物であっても、別途、著作権者の許諾を得なければ、たとえ保管のためであっても原則として複製することができない」という点です(注1)。

 著作権法には、「私的使用のための複製」という有名な規定(30条1項柱書)がありますが、ここにいう「私的使用」とは「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内(=プライベートでの利用目的のみ)」と極めて限定されており、「企業内での複製」は、たとえ「販売目的」など営利目的での利用(二次利用)をしなくとも「私的使用」には該当せず、原則として、方法を問わず他人の著作物を複製することはできないのです(注2)。

 本件も、出版社側は「各教育機関から許諾を得て入試問題を入手し、その後出版物に掲載するなど当該入試問題を二次利用する場合には、しかるべき権利処理を行っていた」と説明しています。
 しかし、「入試問題のデータ保管(そのための複製)については、許諾申請をしておらず不備があった」とした上で、PDF化していた入試問題データを削除することにしたのです。

 

(注1)「文献内のキーワード検索」など、単に情報解析を目的とする場合には、その素材とする著作物の著作権者から許諾を得なくとも、当該著作物を自己(企業を含む。)のパソコン内に記録(複製)等することができます(著作権法47条の7)
(注2)入試問題や資格・検定問題など「本試験問題」の素材として他人の著作物(例:小説の一部)を複製掲載等する場合には、著作権法上、その著作権者(A)からの許諾は不要です(著作権法36条1項)。しかし、出版社などが過去の入試問題を集めて「過去問題集」を編集・制作する場合には、大学など「試験問題の著作権者(B)」のほか、「素材となった著作物の著作権者(A)」の許諾(出版権設定契約等)も必要となります(著作権法12条、79条1項)。

 


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