「他人の演説」の引用

 2016年7月20日、アメリカ大統領選挙の候補者を指名する共和党全国大会における候補者夫人のスピーチの一部が、オバマ大統領の夫人が8年前に行った演説の一部からの盗用であり、これをスピーチライターも認めた旨の報道がありました。

 これは「他人の演説(口述=言語の著作物)を、自己(オリジナル)の演説として勝手に利用した」という意味で「盗用」と報道されているようですが、本件を日本の著作権法に照らして考えると、「他人の演説原稿」作成のためスピーチライターが盗用した時点で「複製権の侵害」となり得、さらに、この原稿をもとに(自己の演説として)公衆に向けて演説を行うと「氏名表示権や口述権の侵害」となり得ます。

 一方、「引用」であれば、他人の演説であっても自由に利用することができます(引用の意味や方法についてはこちらを参照)。

 「引用」は、通常、論文など文章内における「複製引用」を想像されることと思いますが、著作権法では、複製引用に限定しておらず、演説(口述)、写真、映像、音楽など、「自己の著作物」内で利用可能なものであれば、あらゆる「公表された他人の著作物」が引用元(出所)となり得ます。

 今回の一件も、「ミシェル(オバマ大統領)夫人の演説からの引用であるが・・・」と、出所を明示して演説を行えば、盗用騒ぎにはならなかったかもしれません(出所の明示義務は、日本やアメリカなどベルヌ条約加盟国に共通)。

 もっとも、オバマ大統領(民主党)と対立する共和党の大統領候補の夫人が、「敵対する大統領夫人の演説を引用した」など明示できるとは思いませんが・・・。(塩島)