「著作物」と「著作権」の守り方

1.対応が難しい「インターネット上の著作権侵害」

 去る3月に東京富士大学をお借りして実施したビジネス著作権検定上級対策講座では、音楽、映画、写真、出版、システム開発など様々なジャンルでお仕事をされている方々にご受講頂き、休憩時間には、それぞれ関係される「著作権」について大変興味深いお話しを聞くことができました。
 現に著作権侵害を受け係争中の方もおり、そこで改めて感じたのは、「インターネット上で著作権を侵害されると、特に個人著作者の場合、権利回復までに膨大な労力と費用を要する(=取り返しがつかない)」という点です。

 私が、かつて書籍(文章等)の著作権侵害を受けた際には、侵害物も「書籍」であって証拠物が明確で、また、相手方(出版社及び著者)も明確であったため、当初から対象を限定した戦いが可能でした(発覚から3ヶ月後に和解。ちなみに、この経験が、私が「著作権教育」を始めたきっかけとなりました)。
 一方、インターネット上で著作権侵害を受けた場合(例:写真が無断転載された場合)には、相手方(侵害者=発信元)が匿名であれば直接交渉が困難で、さらに「転々載」されるなど無限に相手方が増えるおそれがあり、それぞれにプロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」や著作権法及び民法(不法行為)に基づく「損害賠償請求」をするには、弁護士などの専門家に依頼する際の着手金など、手続費用も相当の金額となります(もちろん、精神的ストレスを抱えながら「相当の時間」も要します)。

 著作権法及び民法によれば、「著作権侵害に対しては、差止請求や損害賠償請求をすることができる」と規定されています。
 しかし、実際にこれらの請求(著作権侵害に対する事後対応)をするには、特に個人著作者にとっては、このように高いハードルが待ち受けています。
 そこで、著作者(著作権者。以下、本稿において同じ)には、「いかにインターネット上の著作権侵害を未然に防ぐか」という視点が重要となります。

2.いかにインターネット上の著作権侵害を防ぐか!?

 「著作権侵害を防ぐ」と書きましたが、厳密には、「著作物の無断利用」と「著作権の侵害」とを、それぞれ区別して対策を立てることが大切です。
 「どちらも同じでは?」と思われるかもしれませんが、実際には、著作権侵害は「財産権の侵害」であるため、侵害者に対しては、「無断使用の差止め」とともに「損害賠償請求」といった措置まで視野に入れることになります(注1)。
 しかし、著作者側の要望として、「お金の問題ではなく、コンテンツ(著作物)の無断利用をやめてもらいたい」、「お金はいらないが、クレジット(著作者名)は表示して欲しい」というケースもあります。
 そこで、「著作物の無断利用(対策)」と「著作権の侵害(対策)」とを分けて考える必要があるのです。
 なお、いずれにおいても、自ら創作した著作物であるなど「自身に著作権があること」が大前提となります。
(注1)損害賠償請求をする場合、著作者において「侵害者側の故意又は過失」、「財産的被害の発生」と「金額算定の根拠」を証明する必要があります。

3.「著作物」の守り方

 インターネット(Web)上で公開する場合に限らず、著作物に対する「氏名(会社その他の団体名)の表示」を徹底するようにしましょう。また、インターネット上で公開したコンテンツについては、「完全なコピー防止は技術的に困難」という前提に立った対策が必要です。
 簡単に言うと「①大切な著作物はインターネット上には公開しない」ということになりますが、公開する場合には、「②ウォーターマーク(画像透かし)や©mincho等のクレジットをこまめに表示する(注2)」、「③著作物の利用条件・利用方法を明確にする」といった方法が考えられます(ここでは対価を伴わないもの。対価の伴うものは4.「著作権の守り方」を参照)。
 なお、SNSで拡散して欲しい場合であっても、「自由に利用してもらっていいので、何も措置を講じない」という態度は、他人のコンテンツに対しても無断利用を増長する原因となるため避けるべきです(少なくとも③の措置は講じましょう)。

「著作物」の守り方

ポイント:「自身(自社)の著作物であることを明示する」→ 氏名等の表示の徹底。

  1. 大切な著作物はインターネット上に公開しない。
    → 個人情報や個人(友人・家族など)の肖像(顔写真)を含むコンテンツや、商品として販売するコンテンツ(見本を除く)は公開しない。

  2. ウォーターマークや©+著作権者名を画像上やコンテンツ近くに表示する。
    → Webサイトのトップページ下だけでなく、各ページ・コンテンツ毎に表示する。「ダウンロードOK」としたコンテンツについても同様。

  3. Webサイトの目立つ場所(ページ下部ではなく「上部」)に、「利用条件」や「著作権について」といったタグを表示し、以下の情報を掲載する。
    「無断転載禁止」のほか、利用を許諾できる範囲と許諾を求める方法(メールアドレスやフォームなど)、無断利用をした場合のペナルティー(例:1画像あたり月額1万円など)を掲載。「無断転載可」とする場合でも、出所(クレジットや提供元Webサイト)を表示してもらう。

(注2)©(コピーライト)マークの意味についてはこちら。なお、「警告」の意味は認められるため、©+著作権者名だけでも表示しておきましょう。

4.「著作権」の守り方

 一方、「財産権である著作権」については、「売り物であるのだから、店先陳列ではなく、店内でしっかり管理する」という発想で対策を立てる必要があります。
 具体的には、「①専用ページを設ける」、「②見本(サンプル)のみ掲載し、コンテンツ全部は掲載しない」、「③料金(表)を明示する」、「④利用条件や申込方法を明確にする」又は「⑤著作権等管理事業者に加入する(管理を委託する)」といった方法が挙げられます。
 特に、著作権侵害(無断利用)に対する「損害賠償請求権の行使」も見据え、明瞭・妥当な金額で③を明示することが大切です(損害賠償額算定の根拠となります)。

「著作権」の守り方

ポイント:「売り物として料金を決め、しっかり管理する」→ 金額を明示し、訪問者に「有料であること」を認識してもらう。

  1. 有料コンテンツを掲載する「専用ページ」を設ける。
    → 見本・サンプルコンテンツと分けて紹介・表示する。会員登録後にログインやサンプルのダウンロードを認める。下記③④とリンクさせる。

  2. Webサイト(トップページ)には見本のみ(又はコンテンツの一部分)を掲載し、有料コンテンツ全部は掲載しない。
    → 見本にも、氏名等及び見本である旨を表示する。

  3. 料金(表)を明示する。
    → コンテンツごとの利用料を具体的に決めておく。なお、利用形態(著作権譲渡、独占的利用許諾、通常の利用許諾)ごとの値決めが望ましく、通常は、
    著作権譲渡 ≧ 独占的利用許諾 > 通常の(非独占)利用許諾の金額設定となる。

  4. 利用条件や申込方法を明確にする。
    →「利用申込み」タグを設け、「利用申込みページ」に利用形態ごとの利用条件
    (契約内容や約款)を記載する。③の料金表示と一体化した上で、決済方法も決めておく(「メールでお問い合わせ下さい」だけでは弱い)。

  5. 著作権等管理事業者(団体)に加入する。
    → 以上の著作権管理を団体に委託することで、個人著作者としての負担を軽減する。なお、「著作権等管理事業者」情報はこちら(文化庁)

    → https://pf.bunka.go.jp/chosaku/ejigyou/script/ipkenselect.asp

 特に「個人事業主」としてWebサイトを開設している場合、そこに掲載しているオリジナルコンテンツの管理には十分注意が必要です。
 「簡単に複製されてしまうこと」を念頭に置きつつ、「無断利用させないため」の見せ方・工夫をするようにしましょう。(塩島)

「著作物の利用許諾」と「著作権譲渡」の意義や方法を理解するには、ビジネス著作権検定がお勧めです。
 ビジネス著作権検定(初級・上級)の試験内容についてはこちらから → https://www.biz-shikaku.com/mincho/certification